アビリーンのパラドクス
皆さん、こんにちは。ジャーナリストの青井坂道です。
今回は多数の集団で、意思統一をするのは難しいという話をしようと思います。
団体行動をしていると、実はメンバー全員が望んでいないことを選択してしまうという状況が生じることがあります。これは「アビリーンのパラドクス」と呼ばれています。
アビリーンとは米国テキサス州にある実際の地名です。これを説明する小話として、以下のストーリーを紹介します。
ある4人家族がアビリーンに旅行に行きました。家族の一人が提案し、全員の賛同を得て出発したのですが、距離が遠い上に熱くて埃っぽく、散々な旅路となりました。旅行が終わってから、実は提案者を含む家族全員がアビリーン旅行に乗り気ではなかったということが判明する・・・というものです。
どうでしょう?いかにもありそうなことではないでしょうか?もっと身近な例も出してみましょう。
幹事を引き受けて打ち上げ会場を探していたところ、自分もほかのメンバーも微妙なところを選んでしまったとか、本当は必要ないのに誰も異を唱えないので続けられている会議など、たくさん出てくるのではないでしょうか。
誰か強権者の意向で決められているわけではないのに、周囲が不必要に気を使い過ぎてしまう、または「自分の好きなことと集団のそれとは違う」と思い込んで無条件に決定を受け入れてしまい、集団でも誤った結論を導き出してしまう・・・これがアビリーンのパラドクスです。

決してコミュニティーの仲が悪いわけではなく、「同意」から生じるトラブルというわけです。ただ、相手任せというか、自分で責任を持つという姿勢がやや弱いときに起きやすい出来事と言えるでしょう。
もしあなたが何かしらのコミュニティーに所属しているなら、異論を出しやすい雰囲気を作るとか、ちゃんと責任者を立てるとか、「事なかれ」や「ほかの人が反対しないから」ではない組織運営を目指してはいかがでしょうか。