エレベーター
日々、ビルで何気なく乗るエレベーター。
乗り込むと正面に必ずあるのが、大きな鏡。
皆さんは、この鏡が何のためにあると思いますか?
A.エレベーターに乗る時、自分の背後にいる人間を確認するため
B.エレベーターに乗る間、化粧直しや身だしなみを整えるため
C.車いすの人が、エレベーターを安全に降りられるようにするため
(私もそうでしたが)多くの人がBの理由で鏡を使ったことがあると思います。
また、昨今の物騒な事件も多いため、マンションのエレベーターに乗る時、後ろから来る人を確認する、というのも頷ける使い方のような気がします。
しかし、実は元々の設置理由はCなのです。
エレベーターの「バリアフリー」
ある日、私は新宿の高層ビルのエレベーターに乗っていた時、途中から車いすの女性が乗ってきました。そして、いざ彼女が降りる時、急に困惑したような表情になりました。なかなか降りようとしないので、私は(押してほしいのかな?)と思い、「お手伝いしましょうか?」と声をかけたのです。
すると、彼女はこう言いました。「どうもありがとうございます。(鏡が)見えなくて、うまく降りられなくてご迷惑おかけしています。」と言いました。
私は、この時初めてエレベーターの鏡が、なぜあるのかを知ったのです。
日本では、一般社団法人日本エレベーター協会による「日本エレベーター協会標準」によって、時代により変化しつつも材質や設置場所などを定めていきながら普及が進んできたようです。
車いすに乗る人はエレベーターを降りる際、車いすの向きを変える必要なく、入ったそのままの向きからバックして降ります。この時、周囲や自分に安全に降りられるようにエレベーターの中には大きな鏡が設置されているのです。
でもそれを知らずに何気なく鏡の前に立ち、車いすの人が鏡を見ることを遮ってしまっていることも多いのが実情です。
「バリアフリー」を理解すること
私達の住む街には、よく見ると身体に障害のある人々のためのさまざまな工夫が存在しています。
例えば、駅構内や商業施設内のスロープ、街中の黄色い点字ブロック、横断歩道の音声ガイド等、これらは誰から見ても目的がわかりやすく、これをわざわざ遮るような人はそうそういないでしょう。
でも、エレベーターの鏡のように、実際に車いすに乗った人でないとわからない、世の中の不便さに寄り添った工夫になると、説明書きがなければ私たちはしばしばわからないものです。
世の中には、いろいろな人が住んでいて、最初から知らないのは仕方ないのです。
でも大切なこと一つ一つを共有することで、私たちの社会はもっと誰かに寄り添える、優しい社会になり得るのです。
