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映画「幸せのレシピ」~閉ざした心を開くまで~

映画「幸せのレシピ」

生きていると、多かれ少なかれ嫌なことがあるものです。
それが行き過ぎたときには、何もかもから逃げ出したくなり、心を閉ざしたくなることもあるでしょう。
または、もともとのコミュニケーション下手の場合、はたから見ると、まるで心を閉ざしているように見えるかもしれません。

今回ご紹介する映画「幸せのレシピ」には、頑なでコミュニケーション下手な女性と、心を閉ざした少女が登場します。
しかし、作中での出来事を通して彼女たちには大きな変化が表れて……

シンプルなラブストーリーでありながら、意外と深い映画「幸せのレシピ」をご紹介していきます。

映画「幸せのレシピ」の作品概要

映画「幸せのレシピ」は、2007年に公開されたアメリカのラブロマンス映画です。
今作は、2001年に公開されたドイツ映画「マーサの幸せレシピ」のリメイク版でもあります。

監督は「アトランティスのこころ」で知られるスコット・ヒックス。
主演は「シカゴ」などに出演した名女優のキャサリン・ゼタ・ジョーンズと「ダークナイト」のアーロン・エッカート。
キーパーソンとして、当時の名子役だったアビゲイル・ブレスリンが出演しています。

今作の主役は、腕の立つ女性料理人。
「レシピ」と題名に冠されているように、作中にはおいしそうな料理が多数登場しています。
特に、ティラミスをそばに置いて鑑賞すると良いでしょう。

映画「幸せのレシピ」のあらすじ

マンハッタンの一流レストランで料理長として働くケイトは、腕の良い料理人です。
しかし。
人とのコミュニケーションを不得意としており、自分で自分に課したルールに厳しいという、頑なな一面を持つ人物でもありました。

ある日働くケイトの元に、姉とその姪が事故にあったという連絡が入りました。
結果として姉は死亡。
姪のゾーイが残され、ケイトと一緒に暮らすことになりました。

しかし、ケイトとゾーイの関係は、なかなかうまくいきません。
ケイトの料理に、ゾーイが手を付けないのです。

そんな中、ケイトが働く店に新しい料理人が入ってきました。
彼の名前はニック。
イタリア料理を専門とし、オペラを愛する奔放な人物でした。

当初、ケイトはニックの存在を疎ましく思います。
しかし、ニックはゾーイの心を解きほぐし、やがてケイトの心をも開いていくのです。

「心を閉ざす」ということ

「心を閉ざす」という言葉があります。
これはよく聞く言葉ではありますが、一体どんな状態なのでしょうか。

一般的に考えられるのは、自分の心をわかりやすく他人に伝えず、何かあれば口を閉ざしてしまうような状態でしょう。
もしかすると、もっと病的なものを想像する人もいるかもしれません。

しかし考えてみれば、心を閉ざすのは決して珍しいことではありません。
何か嫌なことがあったとき、ショックを受けたとき、誰とも話したくなくなった経験は誰にでもあることでしょう。
心を閉ざすということは、この状態がもっと強烈に、長引いていると考えて良いでしょう。
もしくは、頑固すぎる性格も「心を閉ざしている」と思われる要因の一つでしょう。

今作「幸せのレシピ」には、このように心を閉ざしてしまった人物が2人登場します。
それが主人公のケイトと、その姪であるゾーイです。

ケイトは、自分で定めたルールに忠実な人間です。
午後は食べ物を食べず、隣人とはデートをしない。
こうした些細なルールを、ケイトは守らずにはいられません。
また、彼女は人と対話することが苦手です。
人の気持ちを考えず、四角四面な事実しか受け入れることができないのです。

ゾーイは幼くして母を亡くした(しかもその場に居合わせた)、というショッキングな経験を持ち、それにより心を閉ざしてしまいました。
人と会話はするものの、食べ物を食べず、自分の殻に閉じこもってしまいます。
また彼女は、料理をしない母に育てられました。

ケイトとゾーイ。
この組み合わせは、今作を象徴するものです。
ケイトにとって、料理はアイデンティティそのものであり、料理以外で自分を表現する術を持ちません。
反してゾーイは、普通の少女。
ショックが大きすぎるあまり、人とのコミュニケーションを拒否してしまっただけです。

物語序盤のケイトでは、ゾーイの心を開くことができません。
口頭でのコミュニケーションを苦手とするケイトでは、料理に重きを置かないゾーイの心の中に踏み入ることが困難だからです。

ニックは、こうしたケイトとゾーイの関係に新しい風を吹き込みます。
ケイトとゾーイの心、双方を解きほぐしたのです。

ニックは朗らかで、オペラを愛する奔放な人物です。
ケイトとは正反対の性格をしており、言葉と態度の両方が親しみやすさを表現しています。

ニックの態度は少し押しつけがましいものであるかもしれませんが、人に嫌がられる類のものではありません。
むしろ優しく、どこまでも深いものです。
特にケイトの心を解きほぐすには、彼のようなある程度の強引さが必要になるでしょう。

仕方のない場合もあるのでしょうが、人に対し心を閉ざしてしまうのは、あまり良い状態とは言えません。
心を閉ざすということは、言い換えれば、コミュニケーションを拒否している状態です。
それと同時に、その心を解きほぐすのもまたコミュニケーションの役割です。

すぐさまニックのようになる、のは無理でしょうが、彼を真似することで得られる人間関係もあるのではないでしょうか。

味覚のコミュニケーション~料理に表れる人となり~

ニックが言葉と態度という王道のコミュニケーションを取る人物ならば、ケイトは味覚を使ってコミュニケーションを取る人物です。
ケイトは言葉が苦手すぎて、作中では上手くいっていません。
しかし、味覚も重要なコミュニケーションの一環です。

美味しい料理を口にしたとき、あなたは何を感じるでしょうか。
ホッとして、舌の感覚に集中するはずです。
そして、そんな美味しい料理を作った人物のことを考えるかもしれません。

料理には人となりが現れます。
繊細な人なら繊細な料理を、おおざっぱな人なら大味かもしれませんし、もしくは、大胆で野趣溢れる美味しさを持つかもしれません。

ケイトはどうでしょうか。
ケイトはフランス料理人です。
高級なフランス料理は(家庭料理を除いて)宮廷料理が元となっていますから、洗練されています。
見た目にも味にもこだわり、繊細です。
ケイトもフランス料理のように、厳格で美しく、洗練されています。
そしてその分、自分にも他人にも厳しいのです。

ニックを考えてみましょう。
ニックはイタリア料理人です。
一般的なイメージとして、イタリア料理はフランス料理に比べて庶民的です。
少しばかり豪快で、多くの人が美味しいと感じる料理です。
ニックもまた豪快で、気取りのない性格をしています。

性格的に、料理的に正反対の二人ですが、1つ共通していることがあります。
それは、人に「おいしい!」と言ってもらいたいということ。
そして、美味しい料理を人に提供したいということ。

ケイトは美味しい料理を提供しようとするあまり、ルールに厳格です。
そのルールを理解してくれない人に対しては辛辣です。
もとより言葉が苦手なため、その行動は過激に映るのです。
ケイトにとってルールとは、美味しい料理を提供するための、絶対的な法律です。

ニックはどうでしょう。
作中で描かれる彼は、美味しい料理を提供するために、柔軟に動き回っているように感じます。
ルールを守ろうとするケイトにティラミスやパスタを食べさせるのが、その表れです。
そして料理の魅力を引き立てるような言葉を使うこともできます。

一緒に食事をすると、お互いの警戒心が薄れると言います。
その上、食卓を共にする相手が、料理を作っていたとすればどうでしょう。
親近感が強まるはずです。

料理=生きるための行動と考えるのではなく、コミュニケーションの一つとして行動してみてください。
勿論、ケイトのように頑なになりすぎず、柔軟な頭を持ちましょう。

そうすれば、いつもの日常に新しい光が指すかもしれません。

まとめ

美味しそうな料理が沢山登場する、映画「幸せのレシピ」をご紹介してきました。
シンプルなものから豪華なものまで、見ているだけでお腹が減ること請け合いです。

しかし、ケイトとニックの人柄に目を向けてみると、ただのハートフルストーリーではないことが分かります。
意外と細やかな描写がなされており、しっかりと2人に感情移入できるのです。

ぜひ、好きな料理を作って、ゆっくり味わいながら鑑賞してみてください。
普段の生活が、より愛しいものとなるはずです。

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